一昨年はうちもお米をつくったのだけど、去年は手が回らなかった。今年はどうするか。
やはり、うちはお米の消費量も多いし、なにせ大好きだし、なんとか自給できたらとの思いはある。去年は以前からお世話になっている農家さんからお米を購入した。無農薬とまではいかずとも、低農薬でがんばっている。山の天辺でつくられているこのお米は国東半島でも何度も賞をとる程美味しいお米。ただ、かれらの田んぼを一度も見た事がなかったので、訪れてみることにした。
そこは、美しい田んぼが広がり、茶畑があり、神社があり、海が望める。
人の手で保たれている風景だ。
お米を頂いている河野さん宅に行くとお茶をいれてくれ、縁側でゆっくりお話をした。
「あんたんとこは子どもは何人おるん?」
「あ、うちは2人です」
「少ないな〜」
「仕事はどこにでよんかえ?」
「あ、いろいろな事をしてます」
「そうかえ」
こんな会話が少し続いた後に、河野さんの営む農業の話をした。
旦那さんが見当たらなかったので聞いてみると、農作業の最中にトラクターにひかれて今は足が不自由なのだと知った。河野さんのまわりでも農業や林業でケガをする人は多々いると言う。ちなみに、河野さん夫妻は既に80近い。わたしより半世紀近くも先輩の夫婦がお米、椎茸、梨、みかんと栽培している。頭が下がるだけではなく、この日本列島の食べ物事情はいったいどうなっているのか、そしてどうなっていくのかと思う。梨はもうやっていけないから、数十年前に植えた木も病気で他の農家に迷惑をかけないようにと切ってしまうのだと言う。遠くを見つめながら話す河野さんの目。巡り巡る日々を農業をもくもくと営みながら生きてきたのだろう。
人間の手で守られてきた風景に思いを馳せる。
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